19.『イラクの自治』についての質疑応答

2005年12月5日、会員との質疑応答より

質問者

「 今回のテーマは、『イラクの自治』ということですが、 イラクは戦争終結後も国内でテロが横行しています。 イラクでは、今年の10月25日には国民投票によって新憲法案が承認されました。 イラク移行政府は新憲法に基づき、総選挙を12月15日に実施、 年内の本格政府樹立と民主化への移行を目指しています。
しかしこの新憲法が承認された翌日には、ザルカウィ派の 武装組織『イラクの聖戦アルカイダ組織』が、国民投票で 承認されたイラク新憲法を拒み、移行政府へのテロを継続することを表明するなど、イラク国内はまだまだ沈静化しそうにないというのが私の印象です。 」

咲華

「現状は確かにそのとおり。 政権ができたかと思えば、反対派の破壊活動が盛んでなかなか 安定しないという状況が続いている。
さあ、君はこの状況をどう見るかな? 」

質問者

「はい。イラクでは現在もテロが頻繁に起こっていて、アメリカに対する反発心も根強く残っています。 ブッシュ大統領は11月19日の演説で、米軍の早期撤退を否定しましたので、来年も引き続き米軍がイラクに駐留することは間違いなさそうですが、米軍もイラク国内の破壊活動を抑えることは難しいのかな、と思います。
そしてほとんど無差別とも思われるテロによって、イラク国内の様々な施設や町が破壊されていることも懸念されます。 」


咲華

「 では、アメリカ軍は本当に破壊活動を停止させようとしているだろうか。 私は米軍の対応は少し甘いような気がしているのだけど、君はどう思う? 」


質問者

「 イラク国内でテロが止まないことについてですが、中東諸国は石油のおかげで国は豊かですが、20世紀に入っても紛争の絶えない地域であり、イスラム原理主義もたいへん過激です。
中東諸国の指導者やテロの親分は、ちょうど日本の戦国大名のようなメンタリティーを持っているのではないかという印象を受けます。
そしてイラクには、他国のイスラム原理主義的テロ組織も集まってきていますから、米軍もがんばってはいるけど、治安を回復するのはなかなか難しいのだろうというのが私の意見です。 」

咲華

「米軍もがんばってはいるけど、治安を回復するのはなかなか難しい」という意見は、読みが甘い気がするな。私は、米軍の実力を持ってすれば簡単に破壊活動は停止できると思う。
ではなぜ米軍は破壊活動を完全にストップさせないのかといえば、アメリカにとってイラクの公共物を破壊してもらうことは都合がいいのだと思う。なぜなら復興のためにはお金がかかり、破壊活動が続けばその額はどんどん膨らんでいくからだ。そうすればどうなると思う。」

質問者

「そうなんですか。 アメリカはわざとテロ活動を見逃しているということですね。そんなこと考えてもいなかったので、びっくりしました。 破壊活動が長引けば、国内の被害はどんどん拡大していって、復興にかかるお金は莫大になり、イラク一国では補いきれなくなる のではないでしょうか。 」


咲華

「そうだね。 君の言うとおり、テロ活動が活発になるほど国内の被害が大きくなって、復興にかかる費用が膨らむことになる。 そうすると、自国のお金だけでは賄いきれなくなるから、当然よそから借金することになるわけだけど、その借金をする相手が問題なんだよ。
復興の費用は『世界銀行』から出ることになる。 そしてこの銀行のキャスティングボードはアメリカが握っている。
だから破壊活動が盛んになって復興支援の額が大きくなれば、その後にできる政権はいやでもアメリカよりにならざるを得ないということだ。
工場長、世界銀行と、今の総裁について詳しく調べてもらえないかな? 」

質問者

「はい。わかりました。

世界銀行(せかいぎんこう、WB; World Bank)は、各国の中央銀行に対し融資を行う国際連合の専門機関です。 一般には国際復興開発銀行を指しますが、1960年に設立された 国際開発協会とあわせて世界銀行と呼ぶこともあります。
国際通貨基金と共に、第二次世界大戦後の金融秩序制度の中心を担っています。
本部はワシントンD.C.。加盟国は184カ国。 この目的に関連した仕事を行っている国連の機関は5つあり、それを総称して、『世界銀行グループ』と呼びます。世界銀行グループを形成する5つの機関は、以下の5つです。
国際開発協会 国際復興開発銀行 国際金融公社 多国間投資保障機関 国際投資紛争解決センター

そしてこの世界銀行グループの現在の総裁は、ポール・ウォルフォウイッツです。彼の略歴は以下の通り。
70年代から約20年間、国務省や国防総省で勤務。 ロナルド・レーガン政権下、東アジア・太平洋担当国務次官補、インドネシア大使などを歴任。
ブッシュSr.政権下では政策担当国防次官、クリントン政権時にはジョンズ・ホプキンス大学SAISの学長を務める。
アメリカ新世紀プロジェクトのメンバーであり、ブッシュ政権内のネオコン陣営の要石のひとり。 2001年1月よりブッシュ大統領(ジュニア)の国防副長官をつとめる。国防長官のドナルド・ラムズフェルドとともに、中東民主化の大義名分の下、イラク戦争への道をつきすすんだ。
2005年3月にブッシュ大統領(ジュニア)により、世界銀行総裁に指名される。 2005年6月には、世界銀行総裁になった。 

先生、なんと現在の世界銀行総裁は、イラク戦争を起こした張本人であるアメリカの国防副大臣でした! 」

咲華

「そうなんだよ。
世界銀行総裁は、いままでも米国防長官だったマクナマラ氏のように、アメリカ政府の要職経験者が就任することが多いのだけど、今回もブッシュ政権の国防副長官が就任するという、露骨すぎる人事が行われている。 工場長が調べた略歴を読んでもわかるとおり、彼は、中東民主化の大義名分の下、イラク戦争への道をつきすすんだ首謀者の一人である。
そしてブッシュ・ドクトリンという、アメリカの今後何十年かにわたる世界戦略の基本方針の立案者でもあるんだ。
その人物が世界銀行総裁に就任しているわけだから、世界銀行からの 借り入れが増えれば増えるほど、イラクはアメリカの経済的支配下に組み込まれていくという図式が成り立つわけだ。
復興予算の配分は当然米国の政権につながる人物に握られるから、現在の治安維持に加え、イラクの復興後の経済まで全てアメリカに依存することになるだろうね。

ここでブッシュ・ドクトリンについて少し説明しておこう。この文書は2002年9月20日に発表された。 正式名称は『アメリカ合衆国国家安全保障戦略』。これはアメリカが国益を最大限に享受するために作成された国際戦略のシナリオである。この文書には、テロとの闘いにおいて今後アメリカがとっていく方針が書かれている。その内容は次のようなものだ。

まず敵国の周辺にある国々をアメリカの味方につけて、敵を段々と孤立させていき、経済制裁もしくは経済戦争に よって補給線を絶って兵糧攻めにする。そうして敵が弱ってきたところで武力行使を行う。
よってこの戦略には、経済戦争、食糧戦争、情報戦争、資源戦争から周辺国への外交戦争にいたるまで、戦争をする場合に考慮すべき全ての要素が含まれている。

こういうレポートによって、今後のアメリカの大まかなシナリオは作られているんだ。そして、この戦略の標的になる国だが、最初にアフガニスタンがやられた。 2番目として、今まさにイラクが料理されているところだ。そして私は、最後はサウジアラビアを狙っているのではないかと考えている 。

質問者

「なるほど。 つまり、イラクはこのブッシュ・ドクトリンに書かれた筋書き通りに叩かれているということですね。 そして復興支援は、イラク戦争を決定した張本人が総裁をつとめる世界銀行が受け持つ。
先生と問答をさせてもらっていると、いつも目からウロコが落ちることばかりですが、今回もすごいです。 まさにアメリカの自作自演、思う壺ではないですか。 」

咲華

  「私はそう考えているんだよ。驚いただろう? しかし世の中というのは、表から見ると複雑に見えるが、一皮剥くと実に露骨でわかりやすいものなんだ。だからアメリカにとっては、武装勢力のテロ活動が続いて、イラク国内の町や施設や道路がどんどん破壊されていく方が都合がいいんだよ。
これは裏を返せば、 アメリカ軍が壊せなかったものを武装勢力が壊してくれるということだから。人道的配慮によって米軍の空爆では壊せなかったものを武装勢力が壊してくれる。
そして復興にはお金がかかる。そのお金は、アメリカと裏でつながる世界銀行が出資する。 すると間接的にイラクはアメリカの支配下に置かれる、ということだね。
もともと、アメリカがイラク戦争を起こした真の目的は、フセインがフランス・ドイツ・ロシアとユーロ決済による石油取引を行おうとしたのを阻止することだった。
だからアメリカはイラクが泥沼状態に陥るのを待っていたんだよ。現在のようにイラク国内が混乱すればするほど、石油利権も通貨決済も、何もかもがアメリカの思う通りになっていくからね。 」

質問者

「先生、イラクについてはよくわかりました。 ところで、アメリカの次の標的はサウジアラビアだということですが、これには少し疑問があります。 私はサウジアラビアは親米国で、サウジの王様もブッシュ大統領ととても親しくしているという印象を持っているのですが、これについてはどうでしょうか。 」

咲華

  「君がそういう印象を受けるのはもっともなことだね。 確かに、サウジは親米国であり、アメリカの言うことをよくきいている。 だからブッシュ大統領もサウジの王様を大事にしている。
でもそれはうわべだけのことで、サウジの石油を狙っていると考えています。サウジアラビアという国は王朝君主制国家であり、分配国家だ。つまり国は王族の所有物なんだ。国民は国家に税金を払わなくていい。 国営の石油関連企業の収入が国民に分配される。王族が持っている石油の利権を国民に分け与えて
やっているという体制の国なんだよ。教育や道路や公共施設も石油を売った収益で賄っていて、全て政府によって行われている。 だから近代的なショッピングモールなどでさえ国家が作っている。
しかし、こういう分配経済では自由競争がないから、経済的発展はまず望めない。アメリカは石油を押さえたいと思っているから、そのためにサウジアラビアを民主化したいんだ。 」

質問者

「なるほど、アメリカは本心では、サウジを狙っているとお考えなんですね。でもそのためには、一国まるまる王様の所有物、という現在の状態のままでは、さすがのアメリカも手の出しようがないということですか。 確かにそういう体制の国では、アメリカお得意の傀儡政権も作りようがないですね。 」

咲華

  「そういうことだよ。 実はすでに、今年の2月に、サウジアラビアのリヤド州で初めて国民が参加する地方評議会議員選挙が実施されているんだ。 これは、当時のアブドラ皇太子(今は即位してアブドラ国王)に、 アメリカが民主化を強く迫ったからだ。
その結果として、形ばかりだが選挙が行われた。 今年8月、前国王のファハド国王が死んだ時、アメリカはすぐに哀悼の意を表明し、錚々たるメンバーが葬儀に参列するためにサウジに渡っている。
その顔ぶれは、チェイニー副大統領、ブッシュパパ、 パウエル前国務長官などで、こういう大物たちが顔をそろえたのは、いかにアメリカがサウジを重要視しているかの現れではある。
しかし、それはアメリカにとって利権が見込めるから重要視しているだけの話で、親密な態度を見せながら実は裏では民主化への強い圧力をかけて、石油を支配したがっているというわけだ。 このあたりの内容は、新聞をよく注意していれば見つけることができるはずだよ。」

質問者

「はい。 表面的な親密さに騙されてはいけませんね。 つまりアメリカのシナリオとしては、まずイラクを支配下に置き、そこから生まれる利益を吸い上げる。
次はイラクを足場にしてサウジアラビアを民主化して傀儡政権を作り、これもアメリカの支配下に置く。
イラク・サウジは産油国のトップ2ですから、
こうして石油の中心をまずバシッと押さえておこうということですね。
先生、アメリカの考えがよくわかりました。 ありがとうございました。」



日本はどうなる INDEXへ

日本はどうなる

日本の国、そして世界の国々のホロスコープチャートから読み解いた未来予測の数々! 今、わが国日本、そして世界はどこへ向かおうとしているのか? 私たちの生活を左右するこの国と世界の政治・経済・天災等はどうなるのか? 私たちの未来はどうなる?そして今から何をなすべきか!!

リンク